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黄金色の銀杏の葉が秋の深まりを伝えていた。
南青山にあるここ宝仙学園大学階段教室にはやわらかい陽射しがさし込み、セピア色に彩られるのは穏やかな午後。教室内には授業中がうそのような眠気に満ち溢れている。
なのに、ぼくはひどく落ち着かなかった。
いつも隣にいる泰征くんが不在のせいもあるけど、それ以上にぼくを不安にするのは彼の言った言葉。
――蛭本にお前の面倒頼んであるから。
そんな勝手を何で……とぼくは焦ったのだけど、抗議はできなかった。
だって一晩中セックスさせられて目覚めた朝、泰征くんはすでにでかけてしまったから……。
教壇では今年還暦を迎える蛭本先生――泰征くんがぼくの世話を頼んだ先生が胸のピンマイクを外し、腕時計を見れば午後四時二○分。もうすぐ講義の終わる時間。この後の授業はない。
はやく帰ろう。
と、ぼくは思った。
ううん、今日はどこかに外泊するほうがいいかも。
外泊して蛭本先生の目の届かないところに避難しないと…。
そんなことを考えるとあたりが騒がしくなり、授業が終わったみたい。
だからぼくはいそいで机の荷物をまとめると、すぐ椅子から立ち上がるのだけど。
「拓海くん」
ややしゃがれ気味の声がぼくを呼んだ。
顔を上げれば階段教室の下から登ってくる恰幅のいい蛭本先生。
ヘリンボーンのジャケットにアスコットタイをあわせる先生はそのままぼくの前へ来ると、脂ぎった顔に奇妙な笑みを浮かべた。
「もう帰るのかね」
「……」
ぼくは緊張しないわけにはいかない。
それでなくても先生にはいやらしいことをいっぱいされちゃっている。
ペニスをさわられるのはもとより、お尻を舐められたり中まで見られたり、お漏らしまで見られてしまったから……目があうだけでいたたまれない。
先生はそんなぼくを頭のてっぺんからつま先までじろじろ眺めると、目を三日月に眇めた。
「斬間くんから聞いてるよ。いろいろ面倒見てくれってね。私も帰るから一緒に行こう」
言葉とともに先生の皺の多い手が伸びてきて、ぼくの肩をゆる……と抱く。その粘着質な感触にぼくは心から怖気た。
「あ、あの、今日はそとに、外に泊まろうと思ってるんです。だから一緒には……」
ぼくは慌てて言うのだけど。
「何言ってるんだ。私は斬間くんから君が家にいることも見張るようにと言いつかってるんだよ?そんなことは困る」
「そ、そう言われても、もう決めたことなので……」
先生が部屋に来たらどうなるか……考えるまでもない。
きっとエッチなことを夜通したくさんさんされてしまうから、だから、部屋には絶対戻らない……と思うのに。
「頷くわけにはいかないな。私も斬間くんから頼まれた責任がある。それに……」
先生が言葉を切ると同時に背後でひとの気配がした。
はっ……とふり返れば、そこにいるのは泰征くんの友だちで、ドレッドヘアーもファンキーな高坂統威くん。ぼくの苦手なひと。
それに彼にもエッチなとこを見られちゃったから、ぼくは激しく動揺するのだけど。
彼らふたりはぼくを舐めるように眺めると、蛭本先生が言った。
「せっかくだから、今夜は統威くんにも来てもらうことにしたんだよ」
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